別れ際に見た、朱色が妙にちらつく。
見送るつもり等無かったが、何故かその背が見えなくなるまで見送ってしまった。
あぁ、眩しい。
「……水野?」
「っ!!」
俺の声に反応して勢い良く振り返る。
「三上……」
不味い相手に見つかった、そんな顔をしながら俺を見てくる。
「お坊っちゃまがどうしてこんな所にいるんだ?」
現在俺たちが居る場所は武蔵森の職員室前。
「別に良いだろ……」
「監督に用事か?」
どうやらその通りらしい。
顔に全部出てんだよ、分かりやす過ぎるぜお坊っちゃま。
「アンタには関係無いだろっ!!」
「そうだな」
確かに俺には関係ない。
こいつの家庭事情も、ましてや進路も。
「………じゃあな」
カラカラッ、と職員室の戸が開かれ水野がその中に消えていった。
カツン、カツン
放課後の人気の無い廊下に響きわたる。
自分のつくため息までもが響く気がするくらいだ。
アンタには関係ない……何故かその言葉が胸に刺さった気がした。
「関係ないか、確かにそうなんだけどよ」
自分らしくない。
そう思わずにはいられないほど、その言葉の威力が凄かったのだ。
何故そんなに威力が凄かったのかは自分でも分からない。
窓辺に佇み、沈み行く夕日を眺める。
「水野……」
その夕日に向かい歩く人影が見えた。
大分離れてはいるが、何故か俺には一目で分かってしまった。
ゆらゆら揺れる影はこちら側。
水野はこちらを見る事は無いだろう。
ただ俺はそれを眺めていた。
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2007.5.31