冷たい風が吹き荒れる。でも、この風はもう直ぐ暖かくなる筈だ。

暖かい風、ふわりと浮かぶ白い雲、澄み切った空気、

――― そして君の笑顔

 

 

温かきは・・・

 

 

何を考える訳でも無く足が動いていた。

何処に?何て聞かれると即答えは出る。水野の所へ、だ。

「死ぬ気?」

顔が真っ青だったが、練習を止める気配が無い。しかも、何かに当たるようにサッカーボールをゴールへ叩き付けている。

「何イラついてるの?」

「・・・・・」

焦点が合ってない。俺を見ている目がフラフラしてる、いや、体全体がフラフラしてるのだ。

答える気の無い水野をよそに俺はふっと彼の顔を覗く。

青い、白い顔が青い。遠くから見るだけでも真っ青に感じたのに近くで見るとまた格別に青く見える。

俺は、はぁ、とため息を付きながら水野を抱っこした。世間一般で言う、お姫様抱っこ、というやつだ。

「何すっ・・・!」

怒鳴っている割に声が小さい。正直言って立っているのも限界だったのだろう。何が彼を此処までさせたのかは俺には分からない。何にイラついてるのかも俺には分からない。

「黙って」

身長、体重、大して変わらない人間を抱っこする何てのは本当は大変なことだろう。でも、俺は何故かそれが苦にならなかった。ただ、水野の体温を確かめるだけ、それだけだ。

少し冷えた体だったが、俺にはとても温かく、熱く思えた。それは俺が体温が低いからだろうか?いや、きっとそうではない。そう感じたからだ。

 

ふわり、ふわりと宙を飛んでいる気分だった。

正直立っているのも辛かった。どうして俺はあんなに我武者羅にやっていたんだろう、風船も膨らまし続ければ割れるというのは分かっていたのに、俺は・・・その息を抜くことも出来なかった。ただ膨らますだけ、そしてどんどん大きくなっていく風船はいつか破裂する。跡形も無く・・・。

あぁ、温かい・・・。

此処は先まで居た世界と別の所だろうか?

最後に俺の瞳に映ったのは郭の心配そうな顔だった。

 

 

「う・・・っ・・ん?」

「水野起きた?」

薄っすらと目を開けるが、まだ焦点が合っていない。

「・・・郭?」

「そう、気分は?」

先程より大分顔色が良くなっていた。

だが、それだけだ。本人の気分は分からない。でも、彼ならどう言うかは分かっている。

「・・・大丈夫だ」

ほら。

「嘘でしょ」

そう言うと微かに反応したが答えは返って来なかった。

「・・・送るよ」

要らない、そう言うとは思っていた。でも、俺は気にせず一緒に帰る事にした。方向は全然違うが、心配なのだから仕方が無い。相変わらず水野は何も喋らず歩くだけだった。

冷たい風が頬を撫で、体は寒さで震える。

「水野大丈夫?」

再度俺は問う。

「・・・あぁ」

そう、と答えてまた黙る。それの繰り返し。

別に水野とは特別に仲が良い訳でも無かった。寧ろサッカーの話題以外で話した事など無い。

でも、何故か気になっていたのは紛れも無い事実で、時々微笑む君に惹かれたのも事実だった。

 

「・・・寒いな」

久々に水野から口にした言葉はそれだった。

「そうだね」

突然の事に吃驚しながらも少し嬉しかった。

「これ、使いなよ」

差し出したのは手袋。

「・・・要らない」

「良いから、ほら」

押し付けるように渡す。戸惑った表情をしながらも手に取る水野に少なからず満足した。

「・・・生温い」

「仕方無いでしょ」

此れだけ言えればもう元気だ、と思いながらも俺は気になる。何故荒れていたのか・・・何にムカついていたのか。

「・・・悪かったな」

「何が?」

「今日、ちょっとイライラしてて・・・」

「うん、あれは明らかに駄目でしょ」

そう言うと少し怒りながらも、分かってるよ、と答えた水野の頬は赤くなっていた。

「何でイラついてたの?」

聞くと何かを考えならが、それでも答えようとしているので水野が喋るのを待った。

誰も通らない道、足音がカツンッと響くのが耳に木霊する。

「最近・・・さ。何も上手くいかなくて・・・」

「例えば?」

そう聞くと更に口籠もりながらも言った。

「・・・対人・・関係・・?」

「・・・・」

まさか、水野からそんな言葉が出る何て思ってもみなかった。でも、水野が人に対してそこまで悩むという事は、その人物は水野にとって、大事な人であるという事は間違いの無い事だろう。

その知りもしない存在に少なからず嫉妬する自分がいた。

「馬鹿でしょ」

でも、それを水野に知られる訳にはいかない。

「な・・!!」

「それでサッカーに当たる何て最低も何も無いよ」

「・・っ!」

そう、大好きなサッカーに当たるのは間違っている。でも、不器用な水野だから、そこにしか当てれなかったのだろう。友達と喧嘩する、何てことも滅多に無い事だろう。寧ろ水野に友達がいるかさえ危うい気がする。風祭とは友達だろうが、どう見ても喧嘩するタイプでは無い。

「・・・そう・・だよな・・」

「ねぇ、水野」

「・・・何だよ」

「相談しなよ」

唐突な俺の言葉に意味が分からないという顔をした水野がいた。

「1人で考えてもどうせ解決何て無理でしょ」

だから俺に相談しなよ、そう言うと水野は小さい声で有難うと答えた。

それだけで心が温かくなるのはどうしてだろう。

 

 

ねぇ、水野、俺はその風船のセロハンテープと針になってあげるよ。

溜まった空気を抜いてあげる。

 

 


意味分かんない話です。いやはや、申し訳ない。しかも、テニプリの某キャラの曲聴きながら書いて・・・意味分からん。
・・・というか話が断片的ですね。久々に書いたせいだろうか。
まぁ、突発的何で・・・軽く流して下さい。
因みに私的解釈では、水野が郭に恋する手前です。ええ、郭は水野の事が好きですが、水野は手前って話。
因みに水野が対人関係で悩んでる相手はお決まりの如くあの人、シゲです。



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