kissの嵐




今日も憂鬱な1日が始まろうとしている。

週末、それが俺にとって嫌な日になるなんて以前は思ってもいなかった。

東京選抜に選ばれて嬉しかったし・・・。

何よりサッカーが好きだった。

だけど、こんな事は予想していない。

 

 

「水野ーー!!おはよー!」

今日も朝から元気だな・・・と思いつつ俺に話しかけてきた藤代を見る。

「はよ・・・」

元気なく答える。

その理由はこれから始まるであろうことを予想して・・・。

「水野元気無いの?そういう時は・・・」

ぶちゅ〜と思わず音がしそうなキスされる。

「んっ・・・」

「どう?元気でだ?」

出るわけない!って答えたい所だけどそんなこと言ったら、またキスされる。

だから俺は・・・

「あぁ・・・ありがとう」

そう言うと藤代は嬉しそうに言った。

「水野、今日は俺が1番だよね?」

「あ、あぁ・・・」

 

 

 

ことの始まりは3週間前にやった練習試合。

相手は割りと強いが勝てない相手ではなかった。

そして、俺は監督に呼ばれてこう言われた。

「今日の相手、強いわよ。ねぇ、水野くん・・・」

「なんですか?」

「貴方の精神は大丈夫かしら?」

その時、俺は調子が悪かった。

信頼出来る奴もいなかったし・・・メンタル面が弱かった。

あの時・・・ちょっと自信が無いとか言っておけば良かったんだ。

でも、俺は・・・

「大丈夫です!」

怒鳴るように言ってしまった。

「そう・・・じゃあ、賭けをしましょう」

「賭け?」

「今日の試合で貴方の精神がぐらつくことが無ければ私は貴方の言う事は何でも聞くわ。その代わり、ぐらついたら私の言う事を何でも聞いてもらうわ。どう?」

「・・・別に良いですよ」

今思えば何て馬鹿なことを言ったんだと思う。

どんな選手だって少しはぐらつくことがある。

・・・・俺は何て愚かだったのだろう。

 

 

「くそっ・・・!!」

イライラしていた。

周りの奴は俺を無視するし上手くプレー出来ない。

この時の俺は本当に周りを見ようとせず1人でいた。

サッカーは1人でするものじゃないって分かっていたのに・・・。

 

 

「ふふっ、水野くん」

「・・・・・・・・・・・・・」

監督のあまりにも嬉しそうな顔に嫌気がさした。

「賭けは私の勝ちよね?」

「・・・・・・・・・・・はい」

認めるしかなかった。

何を言われるか大抵は予想がついていた。

皆と仲良く、協調性を持てだとかそんな感じだろうと思っていた。

 

結果は予想外だった・・・。

 

俺の返事を聞いた監督は

「皆!集まってー!」

と言い選抜の奴らを集めた。

監督の隣にいるせいか視線が集まる。

『何でお前がいんだよ!?』といったような視線。

・・・痛い。そう思った時の事だった。

「私、水野くんとの賭けに勝ったの・・・・それで・・・」

皆には関係ないことだろ?と思いつつ俺は黙って聞いていた。

皆は興味津々といった感じだったが・・・・。

「それで、みんなの気合をいれるために!」

そう言った後にちらりと俺を見て、そっと肩に手をおいた。

「水野くんをプレゼントするわ」

・・・・へっ?

・・・・今なんて?

「監督」

俺が悩んでいると郭が声を出した。

「どういう意味ですか?水野をプレゼントって・・・」

「つまり、簡単に言うと、東京選抜の練習場内では好きなだけ水野くんにキスして良いということよ」

素敵でしょ?と言わんばかりの笑顔で言う。

「な、何言ってるんですか!?・・・というか俺にキスしても気合なんかはいるわけないじゃないですか」

・・・そうだ、俺にキスして喜ぶなんて奴いるわけない。

自分でそう思いつつも少し沈んでいく自分がいる。

別に男にキスされたいわけじゃないけど・・・。

俺が沈みかけているその時、静かだった皆が叫び始めた。

「「「「「うぉーーー!!!」」」」」

ビクッと反応しそちらを見る。

・・・嘘だろ。

俺は自分の目を疑い掛けた。

だってガッツポーズをしてる奴や満面の笑みを浮かべた奴がいたからだ・・・。

「・・・嘘だ」

認めたくない・・・。

「ふふっ・・・水野くんは大人気ね」

信じたくない・・・・。

「知っていたかしら?前から水野くん人気なのよ」

そう言い終わると監督は、今日はここまで、解散と言い皆は帰って行った。

だが、俺はこの時あまりにショックが大きすぎてある事を聞き逃していた。

郭の「深くても浅くてもどっちでも良いんですか?」と監督の「ええ、良いわよ。ただしそれ以上は駄目よ」と言うセリフを・・・。

 

俺は次の練習日までの1週間、無意味に悩む事になった・・・。

 

「ンっ・・・あ・・・んんっ・・・」

舌を絡められて思うように呼吸が出来ない。

俺はこのキスに身を委ねるしかなかった。

「・・・ぷはっ・・・・・・・ゴホゴホッ・・・」

唇を放されると足りなかった空気を思いっきり吸い込む。

一気に大量に吸い込んだせいか俺は咽た。

だが、キスしてきた相手を睨むのは止めなかった。

「ご馳走様、俺が初めてでしょ?」

「・・・・・・・・・・・・っ!!」

顔が赤くなっていくのが自分でも分かる。

「わ、悪いかよ!」

確かに俺はこれが初めてのキスだった。

女の子にモテなかったわけでは無いけど興味が無かった。

サッカーさえあれば充分だったから・・・・。

「別に悪いなんて言って無いでしょ」

周りからは羨ましいとかズルイとか言う声が聞こえる。

逃げよう・・・そう思った時だった。

 

 

 

「・・・・・・・止めた」

思い出すのはあまりにも苦痛だ。

「はぁ・・・」

今日何度目のため息をついただろう。

「水野どうしたの?」

この声に俺は咄嗟に身構えた。

「・・・・イキナリそれ?酷いね水野」

傷ついたという顔をしながら言う。

「英士!お前ばっか水野と話してんなよ!」

「・・・・若菜」

「ってことでおはよー!水野」

「はよ・・・っん!」

突然のキス。いつかされると分かってはいたがやはり吃驚せずにはいられなかった。

「ごちそうさまー!!」

充電完了とでも言い出しそうな若菜に俺は苦笑する。

「次は俺だね」

「えっ・・・・んんっ・・・・・ふっ・・・・」

舌を絡ませる。

「もう・・・んっ・・・やめっ・・・・」

郭にだけしか聞こえないような弱々しい声で抵抗する。

「あ、ずりぃぞ!英士」

「別に良いでしょ」

いや、良くない・・・・と俺は心の中で呟いた。

「・・・・ん?」

視線を感じた。

「・・・っ!!」

俺と目が合うと直ぐに視線をそらした。

「・・・真田?」

俺は近くに行き声を掛けた。

「・・・み、水野!!!」

顔が見る見るうちに赤くなっていく。

「どうかしたか・・・?」

「・・・・ごめん」

そう言い終わると俺の頬に唇をそっとつけた。

「さ・・・なだ?」

あまりにも優しいキスなので吃驚した。

「・・・ごめん、水野」

「いや、気にするな」

自然と笑みになりそう言う。

「・・・水野」

それにつられるように真田も少しずつ笑顔になる。

何だか癒される・・・。そう思う俺がいた。

「あー!一馬!何1人で水野と喋ってんだよー!」

郭と言い争いをしていた若菜が気づき近寄ってくる。

「別に良いだろ!」

「生意気な!かぢゅまのくせに!」

「かぢゅまって言うなって言ってんだろ!バカ結人!」

「なんだとー!ばかぢゅま!」

 

 

「・・・・はぁ、もう勘弁してくれ」

2人の言い争いから逃げている間も障害はたくさんあった。

まさか・・・風祭まで・・・いや、それより渋沢さんが・・・。

「もう嫌だ・・・」

誰か俺をここから連れ出してくれ!そう強く思った時だった。

「あれ?水野くんどうしたの?」

「・・・杉原」

目の前に居たのは天使の微笑を浮かべている杉原多紀。

「で、どうしたの?」

「俺・・・どうしたら良いか分かんなくて・・・」

多分、今の俺の顔は相当情けない顔をしていると自分でも思う。

「大丈夫だよ」

俺の目の前に来、さらに優しい笑みを浮かべる。

「ねえ、そんなに嫌だったら一緒に逃げようか?」

「でも・・・練習があるだろ」

「大丈夫だよ。今、休憩時間だし、ほら」

杉原の差し出された手を俺は無意識に掴んでいた。

「行こう」

「あぁ・・・」

(ごめんね、水野くん・・・僕も水野くんのことが好きなんだ)

 

 

――― 此れは天使の顔をした悪魔に捕まった瞬間

 




おわり




すみません、すみません、すみませーんっ!!
と謝るしか無い小説です。
もう頑張ってギャグ書いてみたんですが不発です・・・。
本当にUPするかどうか悩んだんですが・・・UPしてしまいました。
ギャグなので文字体も変えつつお送りー!文体可笑しくてホント申し訳無いです。
何気に微エロっぽい(笑)
何たってキスの嵐。
やー・・・水野哀れ〜
最後の落ち多紀だしね!!しかも初めて書いたしさ!多紀なんか!!
オイシイ野郎めっ!!(笑)


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