カツン、カツン
目を閉じていた暗闇とは違い、ぼんやりと人工的な光が目に入る。
目を擦ろうにも気だるさが邪魔をして動きたくない。
意識だけが妙にはっきりし始める。
「…………」
ガチャ
「…………」
気だるかった体が動き出す。
まず指がピクッと動く。
自分にしか分からないであろう動きだ。
「水野……」
小さい声でもよく聞こえる。
それほどここは静寂に包まれているのだ。
彼は俺が起きている事には気づいているのだろうか。
「水野……」
声が近くなる。
「何ですか……」
次に口が動き目を開く。
「起きて…いたのか…?」
戸惑った様子のこの声は聞き慣れていた。
「はい、さっき……」
「……起こしてしまったか?」
「いえ」
「すまない……」
謝られたって嬉しいものじゃない。
寧ろその謝りが余計に俺を悲しくさせる事には貴方は気づいてないだろう。
「明日も早いですから寝たらどうですか?」
何処に行ってた?何て聞かなくても分かってる。
「あ、あぁ」
ギシッとベッドが軋む。
「おやすみなさい……渋沢先輩」
「おやすみ、水野」
寝息が聞こえる頃には頭も体も覚めていた。
「……っ」
自分のベッドから抜け出す時には鳴らなかったベッドの軋む音が彼のベッドでは鳴る。
「………」
声には出していないけど言った。
貴方が好きです、と。
毎日行う、まるで儀式のように。
その言葉を言った後にキスをする。
気づかれないようにそっと……。




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2006.6.23



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