僕の前にいる君は本当の君でしょうか?
君の前にいる僕は本当の僕でしょうか?
答えはどちらも偽者でどちらも本物。


「水野く…」
僕の前で綺麗な笑みを浮かべる君。
「しっ」
黙って。
そう言っているのだろう。
大抵君がその顔をするのは何かがあった時だ。
その何かはある人物が関係している。
僕はそれに気づかないふりをして君に微笑みかける。
仲間からは嘘くさいと言われるが君は気づかないだろう……僕を見ていないから。
「どうしたの?」
彼と何かあった?何て聞ける訳もなく。
「猫が……」
彼の視線の先には白猫が。
猫もこちらを見ていた。
まるで品定めされているような程の強い視線だった。
「あ……」
君の声とともに消えた猫。


前から気にはなっていた。
好き?と聞かれれば嫌いと答えただろう。
だけど何故か気になって目が離せなくなった。
弱気な君も一目で分かった。
傷ついた君も分かる。
視線の先にいる相手も。
弱くなっていた君につけ込んだ卑怯な僕。
だけど好きだとは言わない、言えない。
上辺だけの付き合い。
何度体を重ね合っても君の瞳に写るのは僕じゃない誰か。
君は僕を好きだと言うけど……。



「杉原……」
「何だい?」
「好き」
「僕もだよ」
好きという言葉は口に出せない。
出したら僕は君を離せなくなってしまうから。
君は気付いてくれるかな?
こんなにも僕は君を求めているのを。

表と裏……本当はどれだろう。



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2006.6.27

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