Next Christmas








「来年のクリスマスは一緒に過ごそうで」

そう言ったきり連絡は途絶えた。

その言葉は去年のクリスマスが終わった後アイツが言った言葉だった。

 

 

「・・・ったく、どこ行ったんだあのバカ」

シゲが消えてから1年が経とうとしていた。

「はぁ・・・何で連絡寄越さないんだよ」

白い息がふわりと水野の目の前に出る。

「・・・嫌いになるぞ」

なれるわけ無いのにそんな事を呟く。

本気で好きだから余計困る。

嫌いになれれば楽なのに、何処かで他の女作って宜しくやってるんじゃないか・・・とか考えたりもした事もある。

「はぁ・・・」

もう一度ため息を吐く。

白いその息はふわりと冷たい風に流される。

白い冷たくなったその手を上にかざし何かを掴む仕草をする。

「バーカ、早く帰って来いよ。シゲ・・・」

その手を見つめながらポツリと言う。

 

―――お前に会いたいよシゲ。

 

 

 

「なぁ、タツボン・・・来年のクリスマスは一緒に過ごそうで」

「あぁ・・・」

それはただの口約束かも知れない。

でも、出来れば信じたい。

お前が俺の元に戻ってくることを・・・帰ってくることを。

電話越しに聞いたお前の声は温かくて何故か涙が出そうになった。

気付かれないように愛想の無い言葉で返事をして、いつも通りにバカ言って・・・それだけ。

それだけで・・・本当は嬉しかったのかも知れない。

 

 

「寒・・・そろそろ帰るか」

かじかんだ手をポケットに入れ歩き出す。

度々立ち止まり白い空を見上げる。

「雪・・・降るかな」

降っても降らなくても別にどっちだって構わない、シゲさえ居てくれれば。

「去年は確か・・・降ってたな・・・」

シゲとの電話の最中に窓の外を見たら降っていた。

とても白く、ふわりとした雪が。

 

 

暗くなり始めた道を1人で歩く。

「・・・・・・」

静まり返った道に小さな音が響く。

少し温まった手を無意識に頬へと添える。

「・・・・あ」

目の前に白いふわりとしたものが落ちてくる。

「・・・雪?」

水野はふっと空を見上げる。

闇色に染まりかけた空から雪がふわりふわりと落ちてくる。

「綺麗・・・」

黒と白のコントラスト、思わずずっと見ていたいという気持ちに襲われる。

「・・・寒」

そんな気持ちもこの寒さには勝てず家へと足が向く。

 

家の前まで来てふっと違和感に襲われる。いつもこの時間は家が明るいのに今日は暗い。見えるのは傍にある街灯の光りだけ。

「・・・もしかして誰も居ないのか?」

昨日電話した時はそんな事は言っていなかった。

ひょっとしたら買い物にでも行っているのだろうか、そう考えた水野は街灯の下で鍵を取り出そうとした。

「・・・遅いで」

聞き慣れた、でも久しく聞いていない声が聞こえた。

「・・・シゲ」

その声のした方を向き、名を呼ぶ。

「久しぶりやな」

「あぁ」

「これ、クリスマスプレゼントな」

手に持っていたのは真っ赤な薔薇の花束。

「・・・似合わないな、お前」

嘘だ、本当は物凄く似合ってた・・・ムカつくくらい格好良いと思った。

「・・・そか?似合う思うたんやけどな」

「バーカ」

近付きシゲの頬に手をつける。

「・・・いつから居たんだよ」

「大分前からやな・・・そんなに冷たいん?」

「・・・あぁ、でもお前来てるなら何で連絡しなかったんだよ」

そしたらこんなに寒い思いしなくても良かったのに・・・。

「驚かせたかったんや・・・」

「・・・・・・・」

「だから1年も連絡せんかった。・・・我慢して我慢して今日やっとタツボン見れて、タツボンの声聞けて、改めて俺タツボンのこと好きやな、って実感してたんや」

「お前バカで最低だ・・・」

「せやな」

苦笑しながらもシゲは話し続ける。

「でも、最高のクリスマスプレゼントやろ?」

「確かにそう思うけど・・・俺がどれだけ不安だったか分かるか!?」

「ゴメンな」

その言葉とともにシゲは水野を抱きしめた。花束が落ちたことも気にしない程強く、ただ強く。

「・・・1年分のお前の気持ち払いきれよ」

「ええで・・・タツボン気絶せんといてよ」

「何考えてんだ!お前は!」

「えー、気持ちええこと?」

「疑問系で言うな!」

「・・・愛してるで竜也、寒いし入ろか」

「あ・・・あぁ」

シゲは水野から鍵を取り開ける。水野を先に入らせシゲは落ちた花束を拾う。

「早く入れよ」

中からそう言う水野にシゲは自然に微笑む。

「分かっとるって・・・」

そう返事をし、シゲはふっと空を見る。雪がふわりふわりと落ちてきている。

「ホワイトクリスマスやな、神さんからの贈り物やろか?」

そうだとしたら感謝しなくては、とガラにも無くシゲは思っていた。

「早く入れって言ってんだろ!!シゲっ!!」

「ちょっ・・・!タツボン!」

 

 

数枚の花びらが落ちる。

薄く積もった白い雪の上に・・・

 

 




END




一足早いですがクリスマスという事で。
相変わらず微妙なモノしか書けておりませんが・・・頑張りましたっ!!というかイベントには必ずシゲが登場しますね。
にしても、設定が微妙です・・・。
多分高校くらい・・・ですね。というか高校ですね。
因みに水野からは連絡出来ませんでした。シゲ用意周到ですから・・・ええ。
取り敢えず皆様も良いクリスマスを。





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