桜色前線

 

 

 

「何見てんだよ」

少し頬を赤くしながら、そして伏目がちに俺に言う。

「いや、可愛いなぁ、って思って」

それが事実だから仕方ないことでしょ?ねぇ、水野。と口にすれば更に顔に赤みが増す。

「それにしても、凄いね・・・」

「だろ?」

目の前に広がる桜に俺は圧倒されながらも片手にある一つの熱をぎゅっと握り締めていた。

 

 

水野と付き合い始めたのは数ヶ月前から。流石に初めは自分でも信じられなかったけど、でも、やっぱり見ている内に好きだと気付いた。告白してOK貰った時には流石の俺も驚いたけどね、いや、だって、水野だしね。何となく嫌われてるんじゃないかな?何て思ったりもしてたし。でも、今思えばあれは水野なりの愛情の裏返しだったみたい。
今日はそんな水野と久々にデートをしていた。最近色々忙しくて電話やメールでしかやり取り出来なかったから正直嬉しい。春という事だったし、桜を見に行こう、という事になった。更に今回は珍しい事に水野が、だったら俺に任せて欲しい、何て言うものだから全てを任した。

まさか、こんな凄い場所を知ってる何て思っても見なかったけど・・・。

 

 

「水野、よくこんな場所知ってたね」

桜並木、と言っても可笑しくないほどの桜、桜、桜の数。

しかも人が見当たらない、という俺としては何ともオイシ・・・いや、何でも無い。

「昔家族で来たの覚えててさ、此処、結構複雑だろ?」

「確かに・・・」

通った場所といえば、大半が曲がり道。目印、というモノもあまり見付からなかった。

「でも、水野よく覚えてたね」

「まぁ・・な」

「もしかして、勘で来た?」

「な、違うよっ!!」

頬を赤くして怒鳴る水野に対して、図星だと思ったのは言うまでも無い。

「帰れるの?」

少し不安になりながらも訊ねてみる。

「大丈夫、覚えてるし」

まぁ、間違い無いだろう。水野はこう見えて割りとしっかりしているし、時にはぬけているけど・・・。

いざという時は人に尋ねればすむ話だしね。

「なぁ、郭」

「何?」

「お腹・・・空かないか?」

「そうだね、結構歩いたし」

「じゃ、あの桜の木の下で食べないか・・?」

「良いよ」

水野が指したのは1本の大きな桜の木。

 

「へぇ、凄いね」

水野が持って来たお弁当の中身を見ながら言う。

「・・・母さん気張り過ぎ」

水野は恥かしがりながらも美味しそうに食べている。

「今度、真理子さんにお礼言わないと・・・」

「何で?」

「こんな美味しいご馳走を作ってくれた訳だし、大切な息子さんまで頂いてる訳だし」

「な、何言ってんだよっ!!」

顔を真っ赤にして怒鳴りつける水野を少し笑いながら、

「だって実際に頂いちゃったでしょ?オイシク」

と言ったら水野は更に真っ赤な顔して殴ってきた。

「痛いでしょ・・・。って、ほら、顔にご飯ついてるよ」

指で水野の頬にそっと触れ、ご飯粒を取り自分の口に入れた。

「なっ・・・!!」

「どうかした?」

水野の顔を見れば、何を考えているか分かったけど、それはあえて言わないでおいた。

「・・・っ」

どうやら諦めてくれたみたい。まぁ、数ヶ月も付き合ってるし、俺の性格も少しは分かるでしょ。

「あ、水野、桜が・・・」

髪の毛に・・・と言う前に俺の手は自然に水野の髪へといっていた。

「な、何!?」

突然髪の毛を触られたことによって吃驚した様子の水野に構わず俺は淡い桃色をした桜を取った。

「ほら」

水野に手を出させてその桜を置く。

水野の手の白さとその桜が妙に合っていて背筋がゾクッとした。

「・・・どうかしたか?」

「・・・いや、何でも無いよ」

目線を逸らすために俺は何故かふっと上を向いた。

「・・・っ」

見た瞬間に息が止まるかと思った。

舞い散る桜、それは、桜の雪。

淡い色をし、ふわりふわりと落ちてくる。

俺と水野の2人をまるで包むかのように・・・

「・・・水野上見て」

「え?」

水野が息を飲み込むのが分かった。

「綺麗だよね」

「あぁ・・・」

この瞬間、この時間、永遠に続くかのような錯覚に襲われる。

そんな事は無いのに・・・でも、君との永遠ならとても魅力的だ。

今、この瞬間、俺と水野の心は重なり合う。

ふわりふわりと落ちてくる桜を見ながら、そっと、君の手に俺の手を重ね。

ただ、そっと呟く。

 

愛してる、と。

 

 

「ねぇ、水野」

「何だ?」

「来年も一緒に見ようね」

「あぁ、きっと・・・」

 

 

 



大阪に行く前に頑張って書いたんですが・・・UPするのが遅くなってしまいました。
2500を踏んでくださいました、有坂さんのリクエスト!「桜」です。
果たしてお題に副っているか・・・分かりませんが、私なりに頑張りました。
というか、こんな穴場があれば行ってみたい・・・そして、2人の営みを覗き見たい(爆)




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