書いてある言葉を確かめたくて……俺は手を伸ばした。



昔馴染み



「もう夏やな」
「そうだな、ついこないだまで梅雨だったと思ったんだけどな」
「せやな」
目の前にいるのは昔馴染みと言えば良いのか、気付けば傍に居る存在だった。
昔より短くなった髪はより一層彼の男を上げていた。
モテてるのは昔から変わらない。
もっと言えば愛想も相変わらず無いが昔よりは幾分ましだろう。
あぁ、大人になったななんて思いつつ懐かしいと思うのは爺くさいだろうか?
何物思いに耽ってんやろ……。
「あ、シゲこれ」
「何や?」
目の前に差し出されたのは水色の長方形の紙。
上の部分に穴が空いている。
「……七夕?」
「そ、書けよ」
紙だけて当てた俺を褒めてもええんとちゃう?と心の中で思いつつ。
何を書いたらええねん……。
「……たつぼんは何書いたん?」
聞くつもりも無く窓際にあった笹に手をやった。
「……優勝て、またシンプルな」
何の優勝やねん!と突っ込まずにいるのは付き合いが長いせいだろうか。
「別に良いだろ……他に思い浮かばなかったし」
「相変わらずやなぁ」
「煩ぇ……」
あらら、視線反らしよった。
だったら何で笹何か飾ってるん?
そんな事は長い付き合い柄知っている。
真理子ちゃんや。
彼女はこういったイベントは欠かさない。
きっとリビングにも笹が飾ってあるのだろう。
「書かねぇのかよ……」
「んー、もうちょい待ってー!」
「別に良いけど」
そう言うとペンを手にまだ数枚あった紙を取った。
「何か書くん?」
「あー、うん?」
「疑問系かい!?まぁ、ええけど……」
ホンマこの子は天然やな……。
……あれ?
何やっけ……。
前にもこないな事あったような。
いつやっけ?
「シゲどうかしたのか?」
「え、あ、せや、中学ん時や……」
あの時もたつぼん家来て真理子ちゃんに紙貰うて書いたんやっけ。
確か俺は……金が貯まりますように!やっけ?
うわぁ、夢あらへんなぁ……自分ながら現実的な気するわ。
「……たつぼん何て書いてたんやっけ?」
「は?」
突然話を振られて意味が分かって無いようだが、これは俺の独り言だ。
確かあの時の紙には……あれ?思い出せへん。
寧ろ見た記憶すらあらへん……。
せや、思い出した!
俺が何書いたん?見して、と言ったらたつぼんは俺その紙捨てた、とか言いよってん!
で、結局見れず終いやったけど嘘なんは気付いとった。
「なぁ、たつぼん」
「何だよ」
先程からの俺を見て若干不審がっている気がするがこの際無視。
「中学ん時は何書いてたん?」
「へ?」
いきなり過ぎたかも知れないが気になった物は仕方が無いので更に聞く。
「七夕ん時の紙」
「あ……」
どうやら思い出したみたいで段々顔が赤くなって……何でやねん!
何でこの坊は顔赤くしてんねん。
よっぽど恥ずかしい事でも書いたんやろか?好きな子とか……めっちゃ興味ある!
「なぁ、何て書いたん?」
「……忘れた」
「嘘」
「なっ……」
「なぁ、教えて」
ちょっと真剣に言ってみる。
「笑うからやだ……」
やだって、また可愛い反抗やな。
「笑わへんから」
多分、と心の中で付け加えておく。
「……机の一番上の引き出し」
「は?」
何やの!?その切り替えし……ん、たつぼんがベッドで縮こまってる。
顔は隠してるが赤い。
何やの?
取り敢えずたつぼんが言った引き出しを見た。
見るだけじゃ何も起こる訳は無いのでその引き出しを引く。
ファイルやらの一番上に少し色褪せた水色の紙に整った字でこう書いてあった。
『シゲとずっと一緒にサッカーが出来ますように。 水野竜也』
「恥ずっ……」
「恥ずかしいのは俺の方だつーの……」
語尾の方はやたらと小さくなっていたがはっきりと聞こえた。
「たつぼんてそないに俺の事好きやったん?」
「違ぇよ!」
「照れない照れない。若気のいたりってヤツやろ?」
「意味分かんね……」
「せやな」
ホンマは嬉しいねんで?
やってたつぼんてそないな事絶対言わんやん。
あー、何て言うたらええの?愛されてんな、俺?
何か違ぅな。
「忘れろよ」
「無理やな」
「っ……」
「書く事決まったわ」


たつぼんとこれからも一緒にサッカー出来ますように。 シゲ





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2006.7.6


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