ゆらゆら
ゆらゆら
風に揺れる笹の葉

今日は雨
きっと織り姫と彦星は会えない



雨七



外は生憎の雨模様。
窓から入った風が笹を揺らす。
「はぁ……」
「ため息何て先輩らしく無いっすね」
「あ?煩ぇよ藤代」
「すみませんね」
謝る気ねぇし、こいつ。
「にしてもキャプテンはマメですよね」
「確かにな」
窓辺に揺らぐ笹。
これは昨日渋沢が持ってきたものだ。
サッカー部のレギュラーが居る部屋には確実にあるだろう。
「しかも律儀に願い事が書いてあるのがまた……」
笹には2枚飾ってあった。……願い事というより部員に対しての頼みに近いかも知れない。
その紙とは別に数枚の紙を貰った……願い事を書けという事だろう。
「先輩は何て書かれてましたか?俺は……藤代が人参食べれますように、でした」
「俺は……三上が優しくなりますように、だってよ……余計なお世話だつーの!」
「ぶ、ははは…!」
「笑ってんじゃねぇよ!」
大体藤代のはまだ分かるが、俺のは何だ?人格否定か?
「あー……笑いすぎて負けちゃったじゃないっすか…!」
「笑ってる方が悪ぃんだよ」
テレビの画面には1P WINの文字。
「あ、じゃ、何書きました?」
「んー、新しいパソコン、CDが欲しいって書いた」
「……夢無いっすね」
「煩ぇよ。そういうお前は何書いたんだよ」
「新しいゲームソフト下さい!って書きました」
「同じじゃねぇか」
「違いますよ!値段が!」
屁理屈だろ。
「つーか、いい加減部屋に戻れよ」
「えー、だって暇何ですもん」
「知らねえよ」
「ちぇ、じゃ、失礼しましたー」
「はいはい、帰れ帰れ」
ガチャンと戸が閉まる音がし一息つく。
「あー……助かった」
風が入り込みカサカサと音をたてる笹につけられた紙。
数は5枚。
「吊すんじゃ無かったな……」
直ぐ外すつもりだった。
だが、外す前に藤代が来たのだ。
「助かった……」
もう一度良いその紙を笹から外す。
「がらじゃねぇんだよ……」
水野に会いたい。
願い事というより気持ちか、これ?
そんな恥ずかしいことを柄にもなく書いてしかも笹に飾るとか危険極まりない。
藤代に見られなかったのは奇跡だといえるだろう。
「はぁ、今頃お坊っちゃんは何してんのかな」
雨が降る空を眺めながら呟く。
「金髪野郎とイチャツいてたらどうしよっかな……」
いつになく弱気なのは雨のせいなのか。
それとも七夕だからか。
多分両方だろう。
どちらか一つだけなら大丈夫だが重なっては駄目だ。
「会いてぇな」
携帯片手にボヤいても何も起こるはずないのに期待してしまう。
「マジ?」
片手にした携帯が震えだす。しかも表示された名は。
「水野……」
通話ボタンを押し素早く耳に近づける。
「あー、もしもし……」
聞き慣れた声が聞こえた。
「……三上?」
反応しない俺に疑問をもったのか知らないが不安気な声が聞こえた。
「先輩だろ?んで、何か用かよ?」
いつもの調子で聞き返す。
自分が電話待ってました何て言える訳無ぇだろ。
「用は無いけど……」
「何だよ?俺の声が聞きたかったのか?」
笑いながら聞く。
それは俺だけどな。
「違っ……」
照れちゃった?可愛い所あるね水野クン。
「会いたい」
「え?」
「水野に会いたい」
「な、何言って……」
「今から行くから」
「え、ちょ……」
携帯を切りポケットに突っ込み外へ出る。
別に雨の日だからって会えない訳じゃない。
会いたいと思って行動すればいつでも会える。
願わなくても叶う。
それが俺の七夕の願い事だ。






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2006.7.7

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