ふわふわ



君に祝って貰ってから何年経っただろうか。
最初は敵、次に味方。
君の位置は目まぐるしく変わった。
同じなのは君が後輩だと云う事だけだろうか?




「渋沢さん!」
「水野か、どうした?」
俺の目の前には相変わらずの渋沢さんが居た。
立っているだけだったら絶対に守護神には見えないだろう。
彼を包む空気はとても柔らかいものだから。
「どうした?じゃないでしょ……メール見てないんですか?」
「あ、あぁ……すまない昨日は早く寝てしまって」
昨日だけじゃ無いだろ……と思いつつ確かに送った時間は遅かった。
普通の人であれば起きている可能性は高いが彼、渋沢さんの場合は寝ている確率の方が高い。
「別に構わないですけど……」
「す、すまない」
どうやら俺が黙っていたのを気分を害したとか思っているらしい。
そんな事はあるはずかないのに。
「渋沢さんは相変わらずですね、ホント。毎回安心します」
嫌味ではなく本当にそう思う。
「そうか?」
「ええ。そういえば……藤代が会いたがってましたよ」
「……こないだ会ったばかりなんだが」
「全く藤代はホントに渋沢さんが好きなんだな」
そこが藤代の良い所だが羨ましかったりする。
これでも昔に比べれば幾分マシになったであろうと自分では思っているのだが。
「水野は違うのか……?」
「え」
突然そんな事を言われる何て思わなかった。
「そんな訳無いじゃないですか。俺も渋沢さんが好きですよ」
少し沈んでいた渋沢さんの顔が明るくなる。
「そうか」
声も心なしか弾んでいる気がした。
「渋沢さんは……俺の事好きですか?」
「なっ」
見る見るうちに顔が赤くなっていく。
「渋沢さん?」
「あ、あぁ……俺も水野のが…好きだ」
渋沢さんは照れ屋だ。
恋愛面に対してだけだが……気付いたのは付き合い始めてすぐの頃だった。
「渋沢さん」
「っ」
唇にそっと口をつける。
赤かった顔は更に赤くなった。
「好きです」
「みず……」
「誕生日おめでとう御座います」
「え、あ、有難う」
呆然とした感じだった。
「もしかして忘れてました……?」
コクリと頷く渋沢さんに俺は笑った。
「渋沢さんらしいなぁ、ホント」
「水野!」
照れ隠しに名を呼ぶ。
俺はそんな渋沢さんを見てただただ笑っていた。




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2006.7.28

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